【FreeCAD初心者ガイド】壊れた扇風機のファンロータの羽根形状を作成する手順


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破損した扇風機のファンロータを3dプリンターで復元しようという話の派生で、FreeCADの3dモデルの事例として紹介していきます。

合同会社タコスキングダム|タコツボの中の工作室
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本来は安い扇風機といえども流体機器ではあるので、ファンの形状を角度一つとっても重要なパラメーターではあるのですが、立体構造物のリバースエンジニアリングは3次元寸法計測器が無いと厳密には同じような形状を作るのが困難です。

著者の手元にはせいぜいノギスとスケールしかないので、元のファンロータの送風性能をまるまる復元するのは難しいのですが、今回はFreeCADを用いたモデリングの手順の説明に重みをおいて以降で話を進めていきます。


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FreeCAD(Linux版のインストール)

今回のモデルリングもDebian LinuxにインストールしたFreeCAD 0.19で作成していきます。

なお、Debian LinuxにFreeCADを導入する話は以前の以下の記事で紹介させていただきました。

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実物からの寸法解析

まずは件の壊れたロータの寸法をチェックしていきます。

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ほとんど目分量で紙に寸法メモを取っていきます。

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何やら汚い寸法メモになりましたが、あくまで雰囲気を感じていただければ...くらいな紹介です。

ほぼロータは個人が使う目的の一品物になるので、他の方は使えないだろうと思います。

2次元図面おこしの話はさておき、おおまかな寸法は作ったので翼の1枚のモデルリングから始めてみます。


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ロータ羽根のモデルリング

まずは以前紹介させていただいた手法で、これを踏襲し、Draftベンチ+Partベンチを主に用いてモデルリングしていきます。

このやり方だと、後々Pythonマクロ化をしやすいというメリットがあります。

もちろん、通常のモデルリング手順としての
Skectherベンチ&Part Designベンチを使うやり方でもおそらくは可能かと思います。

基本形状を作る

Draftベンチ+Partベンチを使うモデルリングは、基本的に単純形状を分割していき、複雑な形状へと仕上げるようなやり方でシェルを作り込んでいきます。

まずは新規ドキュメントを作成し、
Draftベンチに切り替え、[Auto]ボタンで平面選択からXY(上面図)を選択します。

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すると上面図が編集するモードになるので、ビューもTopに変更します。

まずは半径42.5mmと半径150mmの2つの円のワイヤーを作成します。

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円のアイコンで円ワイヤーが作成できます。

ワイヤーの作成では途中、キーボードから中心をゼロ、半径の値を直接入力できますし、円を適当に作っておいてからDraftオブジェクトのプロパティボックスからPositionやRadiusを直接変えても寸法を調整することができます。

次にこの2つの円ワイヤーを選択しアップグレードすると面が貼られフェイス化します。

さらにこの2つのフェイスを(大きい方の円を先に)選んでダウンロードすると、差がとられて一つの面になります。

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Partベンチに移り押し出しツールから上方向に100mm押し出すとバームクーヘン形の基本形状が作成できました。

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上部方向から見た形状を切り出し

次なるステップとしては先程の基本形状から2次元図面に出来るだけ近い形で切り出しでいきます。

Draftベンチに戻り上部からみたときの形状を作成していきます。

ワイヤーとか点を配置してガイドとしておいて、だいたいの当たりを付けるのも良いかもしれません。

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曲線形状を写真などを見ながらBスプライン曲線で描いていきます。

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今回は非常にざっくりと目分量で曲線を引いていますが、背景に実際の写真画像をインポートして曲線をなぞるように描いていくと、より再現性も向上するかもしれません。

描いた2つの曲線をコピーし、そのコピーを上方向に100mm移動させた後に、
Partベンチの2つの稜線から面を作成で面を以下のような感じに張っておきます。

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そしてバームクーヘン形の基本形状からこの2つの曲面でスライスすると、目的の上面からみた際の断面パートが得られました。

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翼の厚みを切り出す

先程の断面形状を側面から見ながら、ワイヤー表示して、先ほどと同じような要領で羽根の局面を作ります。

まず
Draftベンチで側面を選択して、羽根の根本の形状になるような曲線をベシェツールで作成します。

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この2つの曲線をロフトによって曲面が張れるような位置まで横方向に並行移動しておきます。

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Partベンチで2本の稜線から面を張るツールかロフトツールで以下のように切断用曲面を作成します。

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さらに
Draftベンチに切り替えて、この切断用曲面をクローンし、このクローンを上方向に2mm移動しておきます。

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以上で羽根の曲面を元の立体から切り出すと以下のように羽根の形状が大まかに作成できました。

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あとは細かいことですので具体的な操作の手順は省略しますが、羽根の仕上げは角を面取りしたり、Rをつけたりするのも
PartDraft内のツールで行えると思います。

とは言え面取りなどの細かい修正は、pythonマクロではコーディングしにくいですので、
Part DesignベンチなどのGUIツールが豊富にあるワークベンチのほうで行っても良いでしょう。そこら辺は臨機応変にモデリングしてください。

この羽根を利用したファンロータとしての組立予想図は以下のようになります。

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しかしながらこのサイズの完成品は直径300mmもあるので、一気に出力できる3Dプリンターはかなり大型の部類でしょう。

ですので、回転対称性を鑑みたモデルの分割と組み付け方法はまた別にこれから考えていかないといけません。


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まとめ

今回は扇風機の羽根形状をいかにDraftベンチとPartベンチのみで作成していくかを細かく図解していきました。

もっと細かい寸法情報などが測れる環境であれば、もっと再現度の高いファンロータも作れるはずですが、今回は曲線形状が複数ある場合のFreeCADを活用した手順の紹介に重きをおきました。

次回以降は3Dプリンターを用いた実際の立体の出力の内容をお届けする予定です。
記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

電子工作を身近に知っていただけるように、材料調達からDIYのハウツーまで気になったところをできるだけ細かく記事にしてブログ配信してます。