【FreeCAD初心者ガイド】SVG画像から印鑑を3dモデリングして光学3dプリンターで出力する
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2020/04/24
2022/08/19
近年格安の3Dプリンターが簡単に入手できるようになりましたので、個人レベルでFreeCADを使う・3dCADを勉強したいという需要も高まりつつあります。
今回は光学成形の3Dプリンターを購入したときの造形物の出力方法をまとめた記事です。
かなりの解像度でかなり細かい構造までプリントできるということで、実用を兼ねて(?)印鑑を作成しようと思います。
Inkscapeでsvgに変換
印鑑の元となるjpgやpng画像などの写真からでは直接FreeCAD上でモデル作成しにくいので、写真からまずsvg画像へとInkscapeなどのベクター形式の画像編集ソフトを利用して変換しておくと良いです。
早速、Inkscape を起動し、
[File] -> [Import] -> '画像ファイル'

うまくインポートされると、以下のように写真が読み込まれます。

この読み込まれた画像をクリックして選択しつつ、メニューから[Path] -> [Trace Bitmap]をクリックします。

トレースオプションもデフォルトで良いと思います。もし、トレースの結果が気に入らないなら、閾値を変えてベストな値を模索してください。

いい感じにsvgに変換できたら一先ずOKです。

ただsvgに変換しただけでは不十分で、やっておかないとFreeCADに読み込んだ場合に二つ厳しいことがあります。
1. ハンコ部分が実寸と合っていない
2. 画像境界がそのままでは広過ぎる
という事で、この2項目を手直しします。
まずはワーススペースの寸法スケールを確認します。
[File] -> [Document Properties]
[mm]

変更したら、このダイアログ画面を閉じます。 次に画像オブジェクトをクリックして選択すると上のツールバーにW(幅)とH(高さ)の値がmmで表示されていおり、

このテキストボックスの値を、目的の実寸値に修正します。 今回は幅も高さも21mmの大きさのハンコを作るので、ここを21と入力します。

画像も実寸になりましたが、画像のバウンダリーをデフォルトのままで、空白が上下左右にかなり空いています。

再び
[File] -> [Document Properties]
[Resize page to content...]

すると、隠れていた
[Resize page to drawing or selection]

以上で、svg画像の設定は完了になります。 画像はどこかのフォルダに保存してください。
以降ではこのsvg画像を使って印鑑の3dモデルを作成します。
svg画像からFreeCADで印鑑をモデリングする
前回はsvgの画像作成方法まで説明しましたが、今回の記事でモデリングにどう生かすかを説明します。なお完成したら、以下のようなスタンプになります。

文字刻印部以外の胴体を作る
スタンプの顔とも言える文字の部分は最後に差分にて切り出すため、先にそれ以外の部分を作成しておきましょう。先に差分で切り出しから後工程として胴体などの形を作成してしまうと、PCのパフォーマンスにも依りますが、処理が重くなってしまう恐れがあります。
まずはsketcherで半径10.5の円の図面を書きます。

スケッチを書いたらPart Designのワークスペースにて、以下のように押し出しを行います。

今回は-z軸方向に50mm押し出しをします。

印鑑のモデルを作ろうという目的と逸れるので、今回の説明では胴体はただの円筒に留めておきます。押し出したら胴体の完成です。

パスからサーフェイス化
メニューから[ファイル] -> [インポート]へ進み、svg画像を読み込みます。読み込みのオプションは[SVG as geometry]を指定します。

仕様でこのsvgジオメトリーの初回読み込み位置は、画像の左上の座標が(0,0,0)の原点位置に来るように読み込まれるようです。

初回読み込み後に、モデル構造のエクスプローラツリーを確認すると、なにやらパスがごっそり出てきます。この構造化されたパスは、svgが複雑になるほど立体化した際に意図しない結果を生じさせるため、適宜お掃除が必要です。
今回は元のsvg画像で一番奥の背景で円だったパスが覆い被さり、他のパスが見えないようですので、これを修正します。
まずは、覆いかぶさってるパスを特定し、選択します。

選択後、削除してみます。

すると被さっていたパスが消え、目的のパスだけが見えました。もしまだ重複して重なっていたり、パスが複数交差していたりなどがあったら、その都度手動で修正しますが、あまりにも修正部分が多い場合には、Inkscapeの方でソース画像の方を見直した方がいいかもしれません。
十分重複がないと確認したら、Draftワークスペースに切り替え、使用するパスを全て選択します。

選択したら、閉じたパスをサーフェイスに変換しそのまま統合してくれるツールをクリックしましょう。

上手く行くと、以下のように、スタンプ部の元サーフェイスが出来ます。

サーフェスからソリッド化
サーフェイスからは、
[Part]
[Part]

ツールから
[選択したスケッチを押し出し]

ツールのダイアログから、押し出したい方向を与えます。svg画像から構造化したサーフェイスには法線情報が存在しないため、押し出す際の方向を定義しなければなりません。今回は+z軸方向に2mm押し出します。

押し出すと、以下のように立体を切り抜くためのソリッドが完成しました。

差分をとる
モデルを仕上げます。
[Part Design]
[Position]

スタンプ部の寸法が直径21mmですので、今回はz軸方向の押し出し量2mmとも合わせて平行移動します。

寸法情報があらかじめ分かっているのが重要ですので、移動量入力後は以下のようにきっちりとソリッドが移動するはずです。もし位置ズレがあるようでしたら上記の項目に再読いただき、おかしい点を確認してください。

再び
[Part]
おそらくFreeCADも賢く出来ておりますが、差分ツールを使う場合、最初に
[切られる方のソリッド]
[切りたいソリッド図形]
とりあえず最初に胴体ソリッド、次にスタンプ部を選択し、差分ツールを適用します。

問題がないなら、以下のように切り出しが実行されます。

まとめ
今回の記事は
FreeCAD
では良きフリー3dプリンティングライフを。
書籍
FreeCADは高性能なOSSで、Calculixのような有限要素解析ソフトと統合しやすいのですが、反面その柔軟性からか、操作を覚えるのに慣れが必要です。
現在の最新安定バージョン0.18では、リリースノートに「めちゃバグ修正(Tons of bug fixes)」という記述の通りにFEM周りのかなり苦労されて強化されており、今後はかなり強化が進むものと期待を寄せております。
とはいえ書籍となるとかなり邦書・洋書含めてかなり少ないのが現状です。
邦書になると数年に1回程度のペースで出版されているようですが、古い書籍ほど操作の手順が現在のものと割と違ってきてしまいます。