【FreeCAD初心者ガイド】モデリング操作に便利なManipulator Workbenchのドキュメントを日本語化してみた
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2022/07/26
2022/08/19

FreeCADユーザーの初心者にとって、心理的なハードルになっていることに、FreeCAD公式ドキュメントは日本語に対応してない、ということが挙げれます。
この辺、FreeCADがフリーソフトとはいえ、商用の3D-CADと比較してもかなり高機能なものの、中々日本のユーザー人口がさほど増加しない要因になっています。
また、3Dモデリングする際に知っておきたい強力な追加プラグインの情報も、海外のフォーラムで情報交換されているので、日本語だけの情報サイトで調べても全く話題に上らないこともあります。
今回は、個人的にとても重宝している
ManipulatorワークベンチをFreeCADへインストールする
Manipulatorワークベンチは、標準ではない外部のワークベンチであるので、利用には別途インストールが必要です。
このワークベンチの用途として、パーツの配置、移動、回転、測定を分かりやすいGUI(グラフィカルインターフェース)で操作することです。
Manipulatorワークベンチを使うことで、FreeCADでも3Dモデルを素早く再配置・測定など、パラメトリックでは修正しづらい操作も簡単にできるようになります。
まずは導入方法から簡単に説明していきましょう。
インストール
Manipulatorワークベンチは有志の方が提供している外部のワークベンチですので、FreeCADデフォルトでは利用できない機能です。
まずは、FreeCADでManipulatorワークベンチを使えるようにします。
公式にも書いてあるように、FreeCADのv0.17.9940以降からは
メニューから
[ツール] > [アドオンマネージャー]
ワークベンチ
Manupulator

Manipulatorを選択後、
[選択をインストール/実行する]
インストールが完了後にFreeCADを再起動すると、Manipulatorワークベンチが利用可能になっているはずです。

Manipulatorワークベンチの操作
Manipulatorワークベンチでは、
Aligner(アライナー):
3Dパーツを特定の場所に移動・配置させるためのツール。
他にパーツだけでなく、任意のオブジェクト(面/エッジ/点)をFreeCAD空間の原点移動もできる
Mover(ムーバー):
3Dパーツを、各軸に対して移動・回転するためのツール
Caliper(キャリパ):
有効径、長さ、角度計測の他、簡易スナップ機能を持つ3Dパーツの計測ツール
Manipulatorワークベンチのデモ動画では、おおよその操作概要を見ることができます。
では以降で、この3つのツールを順に使い方のポイントを紹介していきます。
アライナーツール
まずはアライナー機能から使ってみましょう。
空のFreeCADプロジェクトを新規作成し、
[Part]ワークベンチ

次にワークベンチ切り替えから
Manipulator

以下の図に、アライナーツールの主なメニューのダイジェスト版で加筆してみましたので参考にしてください。

おそらくアライナーツールの使い方でもっとも多用するのが、
面と面とのすり合わせ
とりあえずアライナーツールの初期設定のままで、適当な図形を2つで再配置させてみます。
アライナーツールの使い方は簡単で、

何も考えないで面と面をすり合わせたので、この場合の実行結果では、正立方体に円錐柱が埋まって重なってしまいました。
この結果の解釈として、①で選択した正方形の面で、
Align on
次に②の操作で、移動したいパーツ上で選択された円が参照オブジェクトに指定されています。
Reference
ここで期待している配置は、パーツ同士が重ならないような、面すり合わせですので、移動後にパーツの法線方向が逆になるように指定すると上手くいきます。

このように、アライナーツールでは、移動先となるターゲット座標を決め、そこへ移動するための参照点を決め、配置後にどちらの法線方向でパーツを配置したほうが良いかを決める、という3つのポイントを押える必要があります。
一見複雑なことをやっているように感じますが、接続したい2つのオブジェクトと、すり合わせの方向を選んでいるだけですので、コツさえ掴んだらFreeCAD上でもパーツを素早く自由自在に感覚的に配置していくことができるようになるでしょう。

ムーバーツール
次にムーバーツールの使い方に移りましょう。
Manipulatorワークベンチのツールアイコンから真ん中の十字キーのアイコンをクリックすると、ムーバーツールが開きます。

またムーバーツールの各オプションは以下のようになります。

ムーバーツールはその名の通り、選択したパーツやボディーの移動・回転を補助するツールです。
先程説明したアライナーツールでは色々と機能がありましたが、ムーバーツールは、移動することと回転することの2つの機能しかありません。
使い方もシンプルで、まず
Controls
あとは、移動したいもしくは回転したいパーツ上にある線分(エッジ)を基準軸として選択し、
Controls

移動・回転の基準軸は、デフォルトで移動するパーツ上のエッジを選ぶようになってますが、
Settings
ムーバーツールを効率的に扱うためには、まとめて移動・回転したいパーツを、ひとつのボディに階層構造を作ってグルーピングしておくことで、構成パーツの一部の移動し忘れ防止にも繋がります。
また、球などの特定の基準軸になるようなエッジを持たないようなパーツでも、適当な基準軸になるような直線を追加したり、別のボディのエッジを基準軸にすることで、思い通りの移動回転が可能になります。

このムーバーツールも、組み立て図面を作成する際には、とても便利なツールです。
キャリパーツール
キャリパーツールは、簡易計測用の補助を担当します。

キャリパー自体は、「ノギス」の意味ですが、長さ計測だけではなく、

なお、FreeCAD標準の寸法・計測のやり方は以前の記事で特集していましたので、興味があれば、ぜひそちらとも比較してみてください。
キャリパーツールの基本は、2点間の長さを計測する機能です。
ツールは自動で、線分の端点か中点か、円の場合には中心点のどれかにフィットします。
寸法を書き入れたい2点を順に選ぶと、二点間距離の計測結果が表示されます。

点や線分、円・円弧、平面のあるところならば何かしらの2点間距離が簡単に算出できて便利です。
次に円・円弧の半径の計測もキャリパーツールで行わせてみましょう。

図形に円か円弧を含む場合、それを選択するだけで半径寸法が表示されます。
角度計測は、2つのエッジか、もしくは1つのエッジと1つの平面のなす角度を簡易的に取得する機能です。

線分の長さ計測では、1つのエッジからその端点を結んだ最短距離を調べることができます。

この機能は、2点間距離計測の簡易版といった感じで利用できます。
最後に2つのパーツの中心(境界中心か重心)からその距離を測る機能も利用できます。

まとめ
以上、今回はざっとManipulatorワークベンチの使い方の紹介を行なってきました。
部品単位でのモデリングが終わり、完成品の組立図を作成する段階になれば、このManipulatorワークベンチが大活躍すること間違いなしです。
まだ使ってみたことの無い方は一度じっくり自分の手で試されると良いでしょう。