【FreeCAD初心者ガイド】FreeCADで詳細な歯車形状を作成するやり方


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2022/06/08
2024/09/16
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前回の記事で、
「ネジ形状」 を作成するための拡張ワークベンチ・ 「Fasteners」 を使う方法を紹介してみました。

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【FreeCAD初心者ガイド】FreeCADで規格ボルト用のネジ溝を作成する

工業ネジ規格に則したネジ形状を作成したい場合に便利な「Fasteners」ワークベンチの使い方を紹介します。



FreeCADでネジ形状の作成方法をマスターしたら、
「歯車形状」 の作成方法も同時に把握しておきたいものです。
一般に歯車機構として、様々な種類の歯車が存在していますが、今回はメジャーな歯車からややマイナーなものまで簡単に作成できる拡張ワークベンチ・
「Gearワークベンチ」(A Gear module for FreeCAD) を紹介していきます。


参考|A Gear module for FreeCAD

簡単な歯車形状をPart Designワークベンチで作成する



非常に基本的な歯車形状ならば、後述するGearワークベンチを使わなくても作成可能です。
比較のために、
Part Design ワークベンチから歯車形状を作成してみます。
まずは適当なプロジェクトページを新規作成し、
[Part Design] ワークベンチに切り替えて、空のボディを一つ追加しておきます。
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次に追加した空のボディがアクティブになっている状態で、メニューから
[Part Design] > [Involute Gear] をクリックします。
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すると、ボディにインボリュート歯車のスケッチが追加され、
[コンボビュー] > [タスク] のペインから [インボリュート曲線パラメーター] のツールボックスの中の諸元を指定することで目的の歯車形状のスケッチに変更することが出来ます。
デフォルトでは、

            歯数: 26
モジュール数(Module): 2.5mm
圧力角: 20°
高精度: True
外歯車: true

        

のシンプルな平歯のインボリュート歯車パラメータのみ扱えます。
なお、この記事では歯車設計パラメータの詳細は説明しませんので、以下のサイトのような技術解説されている方のページなどを参考にされてください。

参考|歯車を描く - Qiita

とりあえずデフォルト値のまま
[OK] ボタンを押しスケッチを確定させて、あとはいつもの押し出しツールなどでソリッド化すると歯車が作成されます。
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Part Designワークベンチでの歯車形状は原則3つのパラメータ(歯数・モジュール・圧力角)しか扱えないので、この機能だけで緻密な歯車設計をしようと思うとかなり厳しいことが分かります。
よりエンジニアリングツールとしてFreeCADを活用されたい場合、後述する
「Gear」ワークベンチ を使いましょう。


詳細な歯車形状をGearワークベンチで作成する



Gearは有志の方が提供されている外部のFreeCADエクステンションプロジェクトですので、素のFreeCADでは利用することが出来ません。

参考|A Gear module for FreeCAD - Github

ということで別途ワークベンチのインストールを行う必要があります。

Gearワークベンチのインストール




前回同様に、
Fastenersワークベンチ で説明した手順で、アドオンマネージャから簡単にワークベンチがインストールできます。
メニューから
[ツール] > [アドオンマネージャ] をクリックすると、アドオンマネージャのダイアログが開きます。
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後は、ワークベンチの中から
[Gear] を探し、選択したら [選択をインストール/更新する] のボタンを押すことでインストールが開始されます。
インストール後、FreeCADを再起動するとGearワークベンチが使える状態になっていると思います。


Gearワークベンチの基礎的な使い方



ではGearワークベンチを少しだけ使ってみましょう。
まずメニューから追加された
[Gear] のワークベンチ(Gearワークベンチ)に切り替えてみます。
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するといくつかのツールアイコンが表示されていると思います。
これらのツールは、以下のように様々なタイプの歯車形状に対応しています。
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それぞれの歯車形状の詳細なパラメータ設定に関しては、
FreeCAD公式のドキュメント に記載されている内容を個別にご確認ください。
ここでは一例としてインボリュート歯車の作り方に焦点を当ててみます。
Gearでのインボリュート歯車の詳細は
こちらページ で解説されています。
インボリュート曲線のアイコンをクリックすると、ソリッド化した歯車形状が即時生成されます。
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ここから目的の歯車形状に変更するには、コンボビューから生成されたソリッドを選択肢、
[モデル] > [データ] のプロパティリストに切り替えます。
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見てのように、Part Designワークベンチでは、主に歯数・モジュール数・圧力角の3つしか扱えなかったパラメータより緻密に制御できることが分かります。
せっかくなので公式のドキュメントを邦訳で記載しておくと、

プロパティ名 属性 説明 備考
Placement Base オブジェクトの位置と方向
Label Base コンボビュー上のオブジェクト名
da computed 歯先円(歯の先端の一番外側の円)の有効径 計算値/自動更新/読み取り専用
df computed 基礎円(インボリュート曲線の基礎になる円)の有効径 計算値/自動更新/読み取り専用
dw computed 基準円(ピッチ円)の有効径 計算値/自動更新/読み取り専用
transverse_pitch computed 回転平面上のピッチ長 計算値/自動更新/読み取り専用
beta gear_parameter ヘリカル角度(β角) 正の値:右回り/負の値:左回り
clearance gear_parameter 対向する歯車からの隙間 既定値0.25[mm]
double_gear gear_parameter ダブルヘリカル溝にするか否か 既定値False
head gear_parameter 歯の深さの補正長さ 既定値0.0
height gear_parameter 歯車の幅 既定値5[mm]
module gear_parameter モジュール数 既定値1[mm]
properties from tool gear_parameter betaが設定され、かつ、properties from toolが有効の時にヘリカル角度を再計算する 試験的な機能
shift gear_parameter 歯底の切り込み量。正の値:切り込み量を減らす/負の値:切り込み量を増やす 既定値0.0
teeth gear_parameter 歯数 既定値15
undercut gear_parameter 歯底により細かいくびれ状の切れ込み構造を付与するオプション 既定値False
pressure_angle involute_parameter 圧力角 既定値20°
numpoints precision インボリュート曲線の分割点数。細かいほどインボリュート曲線の精度が高くなる。 既定値6/大きすぎると予期せぬエラーが起こる
simple precision シンプル表示(歯を消してピッチ円の円柱のみ表示)
backslash tolerance バックラッシュ 既定値0.0
reversed_backslash tolerance バックラッシュの符号。True:バックラッシュを減らす/False:バックラッシュを増やす 既定値False


見ての通り、全てのオプションを把握する場合には工学的な歯車の構造の知識が必要になりますが、気になるパラメータがあれば、ちょこちょこ値を変えてみると視覚的になんとなく分かった雰囲気になるかも知れません。
より本格的な歯車の構造・機構など話は『
』のような専門書のほうで学習してみてください。
通常なかなかPythonスクリプト無しでは作成が難しい形状などもパラメータを調整確認しながらモデルを仕上げることができます。
例えば、以下のようなダブルヘリカルギアもあっという間に完成します。
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昔のFreeCADなら色々と苦労した記憶もありますが、フリーの3次元CADでここまで出来るとは、ホビーモデラーにとっては大変良い時代になりました。

Gearコネクターツール



まだ試験的な機能という位置づけを脱しませんが、簡単なギアの自動噛み合わせを行ってくれる
「Combine two gears」 ツールはそれなりに便利です。
使い方もシンプルで、噛み合わせたい2つの歯車に対し、最初に固定位置とする基準の歯車を選択し、次に移動させる側の歯車を選択します。
歯車の歯の設定が整合していたら、以下の図のように、自動で噛み合う位置を計算し、移動してくれます。
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ツールとしては試験的な段階であり、インボリュート形状のギアかラック、もしくはサイクロイド形状のギアかラック、の組み合わせでしか上手く機能してくれません。
また、圧力角などの歯の形状が異なる場合にも自動配置に失敗しますので、注意が必要です。