【FreeCAD使い方講座】Part/Draftワークベンチでベベルギアの面取りをしてみよう
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2025/10/17

2次元図面から押出などで作成したギア(っぽいもの)を3Dプリンターで印刷していざ使おうとすると、うまく噛み合わなかったり、回転が渋かったりすることがあります。 その原因として、ギアの歯のかみ合わせには、単純な2次元図面だけでは分かりにくい考慮すべき多様な諸元が存在することに因ります。
市販のギアでは、これら様々な諸元を考慮し、歯の角が滑らかに面取りされています。 これを3Dモデルでも再現することで、ギアの噛み合わせをスムーズにすることができます。
幸いにもFreeCADには、ギアの設計パラメーターを考慮しながら作成できる便利な
ということで、このベベルギアの面取りは設計者が追加で作業をすることになります。
ネットで検索すると、Part Designワークベンチを使って面取りを行う方法を紹介している動画などが見つかります。
この方法でももちろん可能ですが、Gearワークベンチで作成したソリッドを一度Part Designワークベンチのボディに変換し、
BaseFeature
そこで今回は、
Gearワークベンチの基本的な使い方については、以前の記事で詳しく解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
ベベルギアの作成と準備
まずはFreeCADで新しいプロジェクトを作成し、Gearワークベンチに切り替えてベベルギアを追加します。 ツールバーから
[Bevel Gear]

今回はデフォルト設定のままのベベルギアを使用します。諸元は以下の通りです。
歯形状: ストレート ギアの厚み: 5mm モジュール: 1mm 歯数: 15 ピッチ角: 45° 圧力角: 20° バックラッシュ: 0mm クリアランス: 0.1mm
ギア上面の面取り
ここからが本題の面取り作業です。PartワークベンチとDraftワークベンチを行き来しながら作業を進めます。
Draftワークベンチでの下準備
最初に、面取り形状の元となる円を2つ描きます。
1. ワークベンチを Draft
に切り替えます。 2. 3Dビューでベベルギアの上面が見えるように視点を調整し、上面のフェイスを選択します。 3. Draftワークベンチのツールバーにある [作業平面]
ツール( Auto
と表示されている部分)をクリックし、 [カスタム]
を選択して、選択したフェイスを作業平面に設定します。

4. スナップツールバーで [円の中心にスナップ]
と [端点にスナップ]
が有効になっていることを確認します。 5. [円を作成]
ツールを選択し、ギアの中心を円の中心として、歯の付け根(谷)の端点を指定して一つ目の円を描きます。

6. 同様に、歯の先端(山)の端点を指定して二つ目の円を描きます。

Partワークベンチでのロフト作成
次に、今描いた2つの円を使って、面取り用のカッターとなる立体(ロフト)を作成します。
1. 作成した2つの円の半径を、コンボビューのプロパティで確認し、メモしておきます。今回のモデルでは以下のようになりました。 小さい方の円の半径: mm 大きい方の円の半径: mm
2. 面取りの角度はベベルギアのピッチ角に依存します。ロフトを作成するために、小さい方の円をZ軸方向に移動させる必要があります。その移動量 は以下の式で計算できます。
Eq. ()
ここで、
4. 小さい方の円を選択し、プロパティの Placement
の Position
にある z
の値を変更します。このとき、右端にある数式エディタアイコンをクリックすると、計算式を入力できて便利です。ギアの内部へめり込むように、マイナス方向へ移動させます。

追加で、
<現在の座標> - (3.02 - 2.04) * tan(45)

5. ワークベンチを Part
に切り替えます。 6. ツールバーから [ロフトを作成]
ツールを選択します。 7. 利用可能なプロファイルとして2つの円が表示されるので、両方を選択して右矢印ボタンで「選択されたプロファイル」に移動させます。 8. ソリッドを作成
オプションにチェックを入れて、 [OK]
をクリックします。これで、円錐台のような形状のロフトが作成されました。
スライスで面取りを実行
作成したロフトを使って、ベベルギアをスライス(切断)します。
1. コンボビューで、まず ベベルギア本体
、次に ロフト
の順に Ctrl
キーを押しながら選択します。(順序が重要です) 2. ツールバーの [Boolean fragments]
のプルダウンから [Slice apart]
を選択します。


3. これにより、ギアが複数のパーツに分割されます。ツリービューで Slice001
、 Slice002
...のように分割されたパーツが表示されるので、スペースキーで表示・非表示を切り替えながら、面取りされたギア本体を残して不要なパーツを削除します。
4. 最後に、残ったパーツ( Slice001
など)はまだソリッドではない場合があります。ワークベンチを Draft
に戻り、そのパーツを選択してツールバーの [ダウングレード]
を一度実行し、ソリッドに変換しておきましょう。

これで上面の面取りは完了です。
ギア底面の面取り
底面の面取りも、基本的には上面と同じ手順です。ただし、いくつか異なる点があるので、そのポイントを中心に解説します。
1. 円の作成と半径の確認 : ギアの底面を作業平面に設定し、同様に2つの円を描いて半径をメモします。 小さい方の円の半径: mm 大きい方の円の半径: mm
2. ロフトの作成
上面の時とは逆に、
3. スライス用のカット面の抽出
このままソリッドのロフトでスライスすると、ギアの内部までごっそり切り取られてしまいます。そこで、ロフトの表面だけをスライス用のカッターとして使います。
ワークベンチを Draft
に切り替えます。 作成したロフトを選択し、 [ダウングレード]
を一度実行します。すると、ロフトが複数の面に分解されます。 スライスに使いたい面(円錐の側面)だけを残し、不要な面(上面と底面の円)は削除します。

4. スライスの実行
Partワークベンチに戻り、
ベベルギア
スライス用の面
Slice apart

同様に、不要なパーツを削除し、残ったパーツをDraftワークベンチでダウングレードしてソリッド化すれば、底面の面取りも完了です。
完成
これで、上面・底面ともに面取りされたベベルギアが完成しました。

あとは、このギアを複製・配置して、噛み合わせの状態を確認してみましょう。面取りしたことで、よりスムーズな動作が期待できます。
まとめ
今回は、FreeCADのPartワークベンチとDraftワークベンチを使い、Gearワークベンチで作成したベベルギアに面取りを施す方法を解説しました。
この手法のポイントは以下の通りです。
Draftワークベンチ で面取り形状のガイドとなる円を作成する。 Partワークベンチ のロフト機能で、スライス用の立体を作成する。 Slice apart
ツールで、ソリッドを直接カットして面取りを実現する。 必要に応じて ダウングレード
ツールを使い、ソリッドや面に変換する。