【LTspice入門】ローパスフィルタでPWM波形を平滑化して定電圧(降圧)を取り出す回路の色々


2021/10/20
蛸壺の中の工作室|ローパスフィルタでPWM波形を平滑化して定電圧(降圧)を取り出す回路の色々

PWM波形の擬似発生モデルの作成方法を前回取り上げました。

PMW波形を使った発展的な回路として、
「ローパスフィルタ回路」を使って、直流定電圧を取り出すことができます。

ローパスフィルタ回路にはいくつか種類がありますので、順を追って回路構成を試しながらPWMとローパスフィルタの組み合わせによる電圧の出力特性を考えてみましょう。


RC回路型

まずもっとも基礎的なローパスフィルタであるRC回路を試してみます。

その名の通り、抵抗とコンデンサの一対をPWM波形の後段に組み入れた回路です。

ローパスフィルタを使うことによって、PWM波形からデューティー比に応じた平均電圧を取り出すことができます。

フィルターとしての周波数遮蔽性能を表すカットオフ周波数
fcf_\mathrm{c}の計算式は以下の通りです。

R=12πfcC\displaystyle { R = \frac{1}{2 \pi f_\mathrm{c} C} }Eq. (RC-Cutoff-Freq)

理屈の方はさておき、この回路自体も部品を揃えるのも、ブレッドボード上で試すのも、もっとも楽で安価に作成できるという利点が有ります。

回路の解析モデル

PWM波形の生成は前回作成したサブサーキット・コンポーネントをそのまま利用することとします。

PWM波の一次基本周波数を490Hzとして、VCC=5[V]で駆動するマイコンからPWM波形を発生していると仮定します。

RC回路の内、抵抗の大きさは100kΩ固定とし、コンデンサの容量は
150μF1 \sim 50 \mu\mathrm{F}程度に振って測定します。

合同会社タコスキングダム|蛸壺の中の工作室

解析時間はおおよそ10秒とし、解析を実行すると以下のような結果を得ます。

合同会社タコスキングダム|蛸壺の中の工作室

デューティー比(0.5)を反映して、VCCの半分の2.5Vが得られています。

リップルの発生

さてローパスフィルタによってPWM波形を取り出す際に問題となるのが、出力波形に乗ってくるリップル(ノイズ)の存在です。

これはPWMの基本周波数以上の高調波成分に因るもので、現実のアナログ波形には多かれ少なかれ必ず付いて回る問題です。

短時間とはいえ大きなリップルが発生してくると、例えばマイコンなどのCPU/MPUが載った電気回路では、リップル起源の電気的なノイズが動作に悪影響を与える可能性があります。

一般的にPWMの基本周波数よりも、出力側の波形周波数が十分に小さいならば、カットオフ周波数を下げると、リップル幅は減少します。

RC回路によるローパスフィルタはお手軽な分、このリップルの影響を良く考えて、ローパスフィルタのカットオフ値を十分検討する必要があります。

先程の解析結果で言うと、抵抗を100kΩとした時に、RC回路のカットオフ周波数の式から求めた周波数490Hzの際のカットオフ容量は
32pF程度です。

今回欲しい出力は定電圧であるので、理想で言うとカットオフ周波数はゼロに近いほど良いので、実装しているコンデンサの容量は
32pFよりも圧倒的に大きい数μFオーダーにすることでリップル(高周波成分)を抑えることができます。

ただし結果を見て分かるように、コンデンサ容量を増やしてリップル幅は減っても、逆に飽和時間が長くなってしまいます。

出力値がサチるまでに数秒も掛かっていては、期待した電気的特性とは違った振る舞いが生じてしまう恐れがあり、これも宜しく有りません。

現実的にはリップルも小さく、飽和時間も短い、というベストな条件を模索しなければならないのがRC回路を設計で採用する難しいところです。


LR回路型

別のローパスフィルタ回路で、LR回路があります。

こちらも回路構成はシンプルですが、インダクタの部材選びに難があります。

カットオフ周波数の試算式は以下の形をしています。

R=2πfcL\displaystyle { R = 2 \pi f_\mathrm{c} L }Eq. (LR-Cutoff-Freq)

よって、カットオフ周波数をゼロにより近い方に取ろうとすると、設計値としての抵抗はかなり小さくしなくてはなりません。

抵抗もあまりに小さい値になっては困るので、インダクタには数Hのかなり大きなコイルを採用する必要が出てきます。

以下では先程のRC回路と同じPWM波形を使って、1Hの割と容量の大きなコイルを想定して、抵抗値を振って解析をしてみます。

合同会社タコスキングダム|蛸壺の中の工作室

この解析を実行すると、以下のような結果を得ます。

合同会社タコスキングダム|蛸壺の中の工作室

このローパスフィルタは1Hのコイルを想定しても、リップルや飽和時間などの観点から大体数十Ωの抵抗が適切かと思いますが、抵抗値があまりに低いので、今度は大電流への対策も必要になってきます。

総じて今回のローパスフィルタのユースケースでは扱いの難しい構成と言えます。


LC回路型

LC回路は発振回路として有名ですが、パラメータの選びようによってはローパスフィルタとしても機能します。

この場合、先程までカットオフ周波数と呼んでいた量は、共振周波数と呼ぶべきかも知れませんが、以下の換算式で与えられます。

L=1(2πfc)2C\displaystyle { L = \frac{1}{(2 \pi f_\mathrm{c})^2 C} }Eq. (LC-Cutoff-Freq)

この式から、定電圧を取り出すローパスフィルタとして機能させるためには、できるだけカットオフ周波数を小さくとる必要があります。

カットオフ周波数
fcf_\mathrm{c}が十分小さいと見なした場合、先程の節で説明したようにインダクタはあまり大きめの値が材料として取りにくいので、インダクタの容量はできるだけ小さく抑え、代わりにキャパシタの容量を大きく取ってみます。

合同会社タコスキングダム|蛸壺の中の工作室

解析では大体1mH程度のマイクロインダクタを固定して、LC回路の共振に留意しながらキャパシタの容量を少し振ってみます。

合同会社タコスキングダム|蛸壺の中の工作室

得られた結果を見ると、一応ローパスフィルタとしては機能していることが分かります。

ただしLC回路単独では、リップル幅も大きく、飽和時間も長いので、別の構成でこれらに対処する必要が出てきます。

しかも先程のLR回路と比べてコイルはそれなりにコンパクトなものを選択できるようになりましたが、逆にキャパシタは電解コンデンサの大物が必要になり、トータル的な回路の設計としてはあまりコンパクトになりません。


実用的な回路〜オペアンプの利用

ここからがこの記事の本題です。

上記の内容では、RC/LR/LCのローパスフィルタを比較解析して、(長所と)短所を議論しました。

実際に工業製品などで利用するローパスフィルタの実用性を考えると、先に挙げた回路のもつ短所は後々困ったことになります。

なので、これらの短所を補うようなオペアンプを利用したフィルタ回路を採用されるのが主流です。

回路構成としては入手しやすく安価なオペアンプと抵抗とキャパシタだけで構成することができるのも、かなり利点があります。

今回は前の記事でサブサーキット・モデル化した両電源デュアルオペアンプの
LM358Nを使ってローパスフィルタ回路を設計してみます。

LM358NをLTspiceで利用する方法は以下の記事を参考にしてください。

LM358は安価で主要なウェブショップでも入手でき、一つのICに2つのオペアンプが内蔵してあるので、2段のローパスフィルタも再構成しやすい製品です。

上記で使ったPWM信号はそのまま利用して、以下のようにオペアンプベースのローパスフィルタを構成してみます。

合同会社タコスキングダム|蛸壺の中の工作室

LM358Nには片側+5V電源だけ印加し、回路のキャパシタは
110 [μF]1 \sim 10 \ [\mu\mathrm{F}]で振って解析を試してみます。

解析結果は以下のようになります。

合同会社タコスキングダム|蛸壺の中の工作室

オペアンプ一段のローパスフィルタですが、出力電圧の飽和時間もリップルもかなり抑えられているのが分かります。

一般に、このローパスフィルタ回路の出力を繋いで多段構成にすることで飽和時間もリップルも更に低減することが可能ですので、出力波形に精密さが求められる場合でも使いやすい回路です。


まとめ

今回は、PWM波形をローパスフィルタを使って平滑化するためのLTspiceを使ったシミュレーション手順の概要を一通り解説してきました。

ローパスフィルタ回路には色々と種類もありますが、長所短所が存在しますので、しっかりと勉強した上で回路設計に活かしたいものであります。

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

電子工作を身近に知っていただけるように、材料調達からDIYのハウツーまで気になったところをできるだけ細かく記事にしてブログ配信してます。