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2022/02/11
2024/06/25
3Dプリンターの印刷物の完成度に非常に影響を与えてしまう要因の一つに、フィラメントに残留した水分という厄介な問題があります。湿度の高い日本の風土で、長期補間した3Dフィラメントを定期的に乾燥させるのは必須なプロセスです。とはいえ、市販のフィラメント乾燥器・『 SUNLUドライバックス フィラメントドライヤーボックス 』などは容量サイズなどに7,000 ~ 20,000円程度の値段になります。外観はどうあれ、フィラメント乾燥器の見た目に拘らなければ、安めのフードドライヤーなどで代用することもできます。今回はコストパフォマンス重視の人向けに、簡単なDIYフィラメント乾燥器の設定手順と大体の乾燥させる目安をご紹介します。
Ender-3 【Creality】プラットフォームシート 235*235mm 【TINMORRY】PLA フィラメント ブラック 1.75mm 1Kg 湿気を多分に含んだフィラメントを使ったときの印刷
ちょうど良くシケシケのフィラメントを使ってうっかり一晩かけて印刷してしまう事例があったので、乾燥させないとどうなるか先に紹介してみます。フィラメントが乾燥しているか、湿っているかどうかは見た目では判断不可能です。梅雨真っ最中のこの時期、かなりの期間放置していたPLAフィラメントをそのままおもむろに使ってみることにしました。水分過多のフィラメントによる印刷結果の特徴としては、全体的な立体形状はほぼ原型をとどめているものの、印刷面が薄い綿毛状のものが出ており、ケバケバしく荒い表面になります。特に印刷物に高さがあると積層するフィラメントの定着定着が悪くなりスカスカになってくるようです。積層方向の1層あたりの印刷ピッチは0.08とノズル0.4mmにしてはそここその精度設定だったのですが、横から見るとかなり荒々しい積層になっており、層ごとの接着があまりよろしくないことが分かります。なので、湿ったフィラメントを使ってしまった際の印刷物の最大の"症状"は、層同士の結びつきが弱く、簡単にポロッと剥がれてしまいます。本来はPLAでも綺麗に印刷すると、かなりの硬さになるのですが、印刷中に水分が存在するかどうかで、別の材料かと思うほど脆くなってしまうことが分かります。当初はジップロックのような密閉性のある袋に、シリカゲル吸湿剤も入れてるから大丈夫だろうと思っていましたが、ガッツリと湿気を吸っていたようです。ということで、PLAに限らず、3Dプリンター用に使われるプラスチック材料には、「長期保存の保管方法」と「乾燥状態を保つメンテナンス」が重要なポイントになるということをしっかり意識しておきましょう。
Ender-3 【Creality】プラットフォームシート 235*235mm 【TINMORRY】PLA フィラメント ブラック 1.75mm 1Kg フードドライヤーを改造する
フィラメント乾燥器のベースとして利用するのは、例えば以下のような中国製の円筒状のフードドライヤー・『 フードドライヤー 』などのようなものを利用するが良いでしょう。時期にもよりますが、セールで購入すると フードドライヤー は3,000円程度で購入できます。市販のフィラメント乾燥器と比べると半額程度ですので、見た目や他の機能性に拘らなければ、格安のフィラメント乾燥器を作ることができます。ただし、本来はフードドライヤーですので、食品を並べる五段組のトレーのままではフィラメントをホルダーごと乾燥させることは出来ません。こちらの方のサイトで紹介されているやり方では、トレーの骨組みをニッパーでポチポチと豪快に取り除く方法が紹介されています。もうフードドライヤーとしては使わない予定なら五段組のトレーを破壊するのも有りですが、フードドライヤーとしても使いたいならトレーを壊すのもアレですので、今回は空間を覆えるような乾燥室カバーフードを3dプリンターで作成します。ただこのフードドライヤーは寸法径でいうと300mmを超えてくるので、現在手持ちのCreality Ender-3 PROだと出力能力を考えても一回で出力するのは不可能です。そこで以下の分割パターンのブロックパーツを組み立てるやり方で、カバーフードを出力します。このパーツを何回かに別けて計16点出力して、レゴブロックのような感じにパチパチと組み合わせていきます。そして組み立てると、以下の図のようになります。これでフィラメントがホルダーごと丸々1個入る空間が出来ます。蓋はそのままフードドライヤー付属のものが嵌まるようになっています。
Ender-3 【Creality】プラットフォームシート 235*235mm 【TINMORRY】PLA フィラメント ブラック 1.75mm 1Kg 乾燥量の測定
フィラメントに含まれる水分量の変化は微々たるものですので、質量分解能は少なくとも0.01g程度は欲しいものです。今回の重量の測定には簡易精密質量計・『 高精度デジタル計量器 』のようなもので0.01~500gまで計量できる値段の手頃なものを利用しています。重量計の精密さをとると、最大積載量は500gまでとあまり重いものは測れなくなります。 【TINMORRY】PLA フィラメント ブラック 1.75mm 1Kg などのような典型的な3Dプリンターのフィラメントでは、ボビンまで含めると、1kg程度の重量があります。ということで、今回はフィラメントだけ適量切り取って測量していきます。半年間も未パックのまま大気の状態で放置していたかなり水分量リッチなフィラメントで一定時間ごとに質量を測量していきます。なお、フィラメントの乾燥において考慮しておかないといけないと言われているのが、「雰囲気温度は素材のガラス転移温度以上には設定しないこと」という話です。これは汎用PLAで55〜60℃付近、ABSで80〜100℃付近に存在するので、気を付けておかないと乾燥後のフィラメントの状態がカピカピのグネグネになって、見た目が悪くなってしまいます。なので顧客に出荷する予定のフィラメントなどをうっかり高めの温度設定でアニールしてしまうと、商品としては不良品になってしまいます。ただし、ガラス転移温度を超えたものは使えなくなるかというと、そんなことは無くて3D印刷後の出力状態は良好です。今回は乾燥後のフィラメントの状態を全然気にしないので、乾燥器のほうは設定70℃MAXで利用します。70℃設定にすると実際のフィラメントの雰囲気温度が70℃になっているかというのは使用中の環境による影響がかなりあります。夏場と冬場で外気温によってかなり差が出るでしょうし、フードドライヤー( フードドライヤー )に付属してたカバートレーを使っても壁面が薄いので保温性が低く雰囲気温度がさほど上がらないかも知れません。今回は冬場の寒い時期で70℃固定した結果を紹介しています。これを夏場の非常に暑い環境下で70℃設定して使うと、場合によっては80〜90℃ほどのかなり高めの雰囲気温度になっている可能性も否定はできません。この温度になると、PLAであれば融解してしまうかも知れませんので、設定温度に関しては自己責任でお願いします。ただ、乾燥温度は高ければ高いほど短時間でフィラメントを乾燥できるため、省エネ&省コストで済みます。フィラメントの変形や固着が気にならないレベルで各自ベストな温度を見極めて頂きたく思います。結果は70℃固定で4時間程度で計測した質量の下がりがサチって、十分脱水が出来ていることが分かります。なお、乾燥過程後には、やはり雰囲気温度は70℃付近になっていたのか、PLAフィラメントの表面が若干ながら荒れて、ガラス転移の形跡が確認できます。まぁ、プリント出力のクオリティには問題ないので、個人的には70℃MAXで使っています。何か問題が発生するようなら、設定温度を下げて、乾燥時間を長くするような対策が必要になると思います。
Ender-3 【Creality】プラットフォームシート 235*235mm 【TINMORRY】PLA フィラメント ブラック 1.75mm 1Kg まとめ
今回はDIYできる3Dプリンターフィラメント用の乾燥器に触れてみました。3Dプリンター愛好家にとっては、フィラメントに含まれる水分を除去するのは出力のクオリティーに直結する問題であるために、最低フィラメント乾燥器を一台くらいは所持しておきたいはずです。フードドライヤーでもフィラメント乾燥が可能ですので、是非とも時間があればご自身の手でコスパの良い自作フィラメント乾燥器にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。参考サイト
吸水したフィラメントを復活できないか?フィラメント乾燥機を作る そしてテスト