[プロトタイプ電子基板 x CNC切削加工] 電子基板のプロトタイピング② ~ エンドミル加工とドリル加工


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2020/10/29
[プロトタイプ電子基板 x CNC切削加工] 電子基板のプロトタイピング① ~ アイソレーション加工
前回まででアイソレーション加工の内容 の説明を行いました。
その続きとして、今回はエンドミル加工とドリル加工に関する手順の解説を行います。

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[プロトタイプ電子基板 x CNC切削加工] 電子基板のプロトタイピング① ~ アイソレーション加工

卓上CNCでの実践的なプロトタイプ基板づくりのためのアイソレーション加工を解説してみます。


エンドミル加工



前回まででアイソレーション加工が完了したので、次にエンドミル加工に移ります。
アイソレーション加工だけでは、配線同士のクリアランス、または配線-ベタパターン間のクリアランスが狭すぎるので、エンドミル加工によってこれらのクリアランスを広くする必要があります。 また、プロトタイピング時点では問題が無くとも、基板作成業者に依頼をする段階になった際にクリアランスが十分に取れていないと、十分なエッチングされず、最悪の場合にショートしてしまいます。
一般的にベタパターン-配線間のクリアランスは最小パターン幅の倍以上にする必要があります。
まずは以下のようにアイソレーション加工が終わった直後からスタートします。

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FlatCAMでgcode化



前回の基板レイアウトは少しGNDベタのエリアが無駄に大きかったので、配線とのクリアランスを少し広げています。

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前回と同様にKiCADから出力したガーバーファイルを使います。 今回利用するガーバーファイルは以下の2つです。

            $ ls .
led-driver-v1-F.Cu.gbr
led-driver-v1.drl

        

ガーバーファイルの出力方法に関しては前回説明したので今回は省略します。
エンドミル加工では
led-driver-v1-F.Cu.gbr (表面銅配線レイヤーのガーバーファイル)をFlatCAMで読み込んでgcodeに変換します。

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まずはツリーから
led-driver-v1-F.Cu.gbr を選択し、 Selected タブをクリックします。

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エンドミル加工では
NCC Tool を選択し、加工するツール径を指定します。 他の諸元はとりあえずそのまま既定値しておいて、 Generate Geometry をクリックします。
ジオメトリーオブジェクトでは実際の加工パラメータを設定します。 切り込み量は0.1mmにしましたが、銅の膜が剥がれれば良いので0.05mmでも良い気がします。
送り速度はツール形状とスピンドル回転数から50mm/minにしておきました。 この辺はお使いのCNCにベストな加工条件を各自算出しておく必要があります。

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よければ
Generate CNCjob Object でCNCジョブを生成します。

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問題がなければ、
Save CNC Code よりgcodeが生成されます。

実機で加工



前回に引き続きCNCソフトに先ほどのgcodeを読み込みます。

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すでに先行してアイソレーション加工を行っているので、オートレベリングのデータは消さずにそのまま利用します。

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今回はφ0.8のエンドミルで加工します。

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ツールを換えるときは、刃が基板に当たらない程度までzを手動で上げておくか、アイソレーション加工の終了位置をあらかじめ高めに設定しておくと良いでしょう。

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刃を替えたらまず手動で
x=0, y=0 に移動します。

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なお、bCNCで切削する場合にツールを替えた直後に注意しておきたいのがcontrolの
ボタンです。 一見 x=0, y=0 にしてくれそうな配置で置かれいるこのボタンですが、 x=0, y=0, z=0 (Origin) まで引き戻される機能であり、ツールの高さが変わっているためにそのまま押すと刃先が基板にそのまま激突してしまいます。

x=0, y=0 まで戻すと、今度はツールが変わった分だけz方向の位置を修正します。
以下のような感じでツール及びPCBをプローブでテスターに繋ぎます。

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先程のツールと現在のツールの差分が分かるならオフセット量を設定しても良いのですが、ここでは再びプローブ測定から基板にタッチしたところを接触したらその位置を原点に設定します。
このゼロ出しが終わったら、例のようにプローブはツールとベースから必ず外しておきます。
完全に安全が確認できたら、切削をスタートしましょう。

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...削り中。
切削中は安全に考慮して、保護ゴーグルを着用し、安全な位置で様子を見守りましょう。
削り終わると削りカスで表面が覆われているので、

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この削りカスを吹き飛ばすと、大体の配線パターンが姿を現します。

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GNDベタと配線間のクリアランスが大体エンドミル径程度になっていると思います。


ドリル加工



では次にドリル加工をやっていきます。
プロトタイピング段階でドリル加工をする際には、出来る限り穴のサイズを統一しておくほうがツールの交換回数も少なくなります。 今回は穴の径を0.8mmで統一しています。

FlatCAMでgcode化



ドリル加工では
led-driver-v1.drl (ドリル加工用のガーバーファイル)をFlatCAMで読み込んでgcodeに変換します。

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まずはメニューから
Open Excellonled-driver-v1.drl を読み込んで、ツリーから選択し、 Selected タブをクリックします。
Excellonオブジェクトは基板設計時に既に指定した穴ごとのツール径が指定されていますので、今回は0.8mm径に統一されているか確認するだけです。

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PCBは大体1.6mm厚程度ですので、1.7mm切り込みを入れると貫通すると思います。 後はZ方向の切り込み速度ですが、現在のCNCのパラメータから500mm/min程度にしました。
ドリル加工はVカッターやエンドミルほど難しい設定はないと思いますので、諸元を確認して
Generate CNCjob Object をクリックし、CNCジョブオブジェクトを生成します。

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CNCジョブオブジェクトは先ほどの内容の繰り返しになりますので、そのまま
Save CNC Code ボタンをクリックしてgcodeを出力します。

実機でのドリル加工



では先程と同じようにやっていきます。
0.8mmのドリルツールに付け替えます。

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刃を替えたらまず手動で
x=0, y=0 に移動します。

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プローブをツールと基板側にセットして、
z=0 の位置を探します。

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基板にタッチしたらそこを原点としてセットします。
何度でも言いますが、ゼロ出しが終わったらプローブはツールとベースから必ず外しておきます。
先ほど作成したドリル加工用のgcodeを読み込みます。

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オートレベリングのデータを消すか聞いてくるので、Noを選択します。

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CNCを確認して安全な状況であることを十分確認してからドリリングをスタートします。 PCBは非常に柔らかいので、ドリルでの穴あけは直ぐに完了します。

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最終的な仕上がりは以下のようになります。

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まとめ



今回は切削よるプロトタイプ基板作成のうち、エンドミル加工とドリル加工のポイントを解説してみました。 次回は最終段階して、この基板を切り離しするためのカット加工を実践的に解説していこうかと思います。