初心者向け3Dプリンター『Creality・Ender-3』のノズルお手入れ・交換
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2023/11/01
2024/06/26

FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンターの印刷パフォーマンスを保つためには定期的なメンテナンスは欠かせません。
現在、様々なメーカーから3Dプリンター製品が発売されているので、どれも似たような仕組みではあれど、微妙に組み立て方式も異なり、メンテナンスの手順も慣れていないと、適用工具が無いなど悩ましいことがあります。
3Dプリンターは数あれど、現在メジャーなメーカーの一角となった
今回はEnder3を例に、フィラメントのエクストルーダー周りのお掃除とノズルの交換を行ってみたいと思います。
Creality Ender-3シリーズの概要
Creality社の3Dプリンターの
Enderシリーズも3/5/7モデルやその改良モデルなどが多数ラインナップされていますが、Amazon等の国内で入手できるモデルは限られたものになっています。
もっともベーシックな構成でかつ3万円程度(為替で価格帯が左右されます)で購入できる「Ender-3」、その後継シリーズの一つである第二世代の「Ender-3 V2 Neo」、ノズルの最高温度を高めて様々なフィラメントに対応できる高機能モデル「Ender-3 S1 Pro」、現行で最新の第三世代で最もスタンダードな「
なお、今年に発売となって、3Dプリンター界隈で話題となったCrealityの新たなフラグシップモデルと位置づけされる「
3DプリントをCrealityの製品でコツコツと始めたいしたい入門者にとっては、Ender-3は低価格帯かつ信頼性の高い実績を兼ねそなえた、ある意味「教科書」的な商品です。
無印のEnder3はお値段的にもっともお安くなっている分、要所要所を自分でメンテナンスしてパフォーマンスを保たないといけません。
今回は自分の防備録も兼ねて、もっとも困る部分の「ノズルのお手入れ・交換」の手順を説明していきます。
Ender3(無印)のフィラメント吐出ノズルのお手入れ
現在著者個人で所有していたEnder-3は、結構前に知人に譲ってしまったため、手持ちのハードがないので、以下の有志の動画をお借りして説明させてもらいます。
とりあえずエクストルーダーの清掃の手順を基本として、途中、ノズル交換もまとめて解説していきます。
エクストルーダーのお手入れのポイント
さて、エクストルーダーの清掃に取り掛かる前に、使っていくうちにどこが印刷に悪影響を及ぼしているのか、良く知っておく必要もあります。
下図は参考の動画中に説明されている「Ender-3」のエクストルーダーの断面を模式化したものです。
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3Dプリンターを使い込んでいくうちに、ノズルと、テフロンチューブの間の僅かな間隙に押出きれなかったフィラメントがたまり込んでしまいます。
こうなると、ヒーターユニットはフィラメントに十分熱を伝えきれなくなり、設定温度を上げても融解できるフィラメントの押出量が減少し、最終的な印刷物の仕上がりがスカスカになってしまう恐れがあります。
ただし、この単純なエクストルーダーの構造からくる特有の問題は、5年以上も前には良く議論されていましたが、現在の3Dプリンター製品のほとんどは対策済みになったものの方が多いようです。
他方で、こういった初期の3Dプリンター製品で起こっていた問題は、一から3Dプリンターを自作したい人にはぜひ覚えておきたい組み立てポイントの一つです。
エクストルーダーの分解〜清掃する
ということで、できるだけヒーターユニットの中にできた余分なフィラメントのカスを取り除くことがお手入れの一番のポイントです。
印刷直後など、フィラメントがエクストルーダー内部に残ってる場合には、手動でノズル温度を昇温して、フィラメントを引っ張りだしましょう。
だいたいのフィラメント融解に上げておいて、
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フィラメントをプリンターからツーっと引っ張り出します。
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冷却ファンユニットを留めているネジを外します。
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ファンカバーを外すと、ヒーターユニットの電源ケーブルとセンサーケーブルがあります。
ケーブルは取り外しできないので、強く引っ張らず、ファンユニットをサイドに引っかけながらおいておきます。
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ゴム製の保護カバーを取ります。
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これで、内部のヒーターが剥き出しになりました。
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六角レンチ等で固定具を押し付けながら耐熱チューブを取り出します。
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チューブ固定用のフィッティングも六角レンチで外します。
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ヒーターブロックをおさえながら、ノズルも外します。
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ノズルも取れました。
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この状態で、ヒーターブロック内部に溜まったり、ノズルの周りの付着したりしているフィラメントカスを除去します。
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ゴミが取り除くことができたら、清掃完了です。
エクストルーダーの再組み立て
掃除したら、先ほどとは逆手順で再び組み立てます。
分解したあとの耐熱チューブの挿入には気を遣います。
耐熱チューブをヒーターブロックに入れます。
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一旦チューブがちゃんと貫通できることを確認します。
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そこからチューブがヒーターブロックからギリギリでないような位置まで引き込みます。
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前節でも図解したように、ここからできるだけ内部で間隙を作らないように、ノズルで押し上げるようにはめ込みます。
このとき、ノズルは
なお、Ender-3の「ノズル交換」はこのときに行います。
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念押しで、チューブを押してこんで隙間が無いことを十分確かめます。
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ここでノズルを完全に締めていきます。
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保護カバーを付けます。
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冷却ファンユニットを付けます。
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最後に緩まないように固定具のチューブ入口をインシュロックで耐熱チューブを固定しておきます。
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Ender3 Pro
Enderシリーズでは、アップグレード版や、世代を重ねるごとにエクストルーダーのメンテナンスやノズルの交換が容易な構造に改良されています。
一例として挙げるのが、Ender-3のアップグレード版である
こちらは先程説明してきたEnder-3のエクストルーダー周りに改善がなされています。
なお、「Ender3 Pro」は、スタンダードのEnder-3から電源ユニット周りを強化したモデルで、ノズルやベッドの昇温性能や、冷却ファンユニットの能力向上がなされたモデルです。
現在、日本のストアだと買えないようなので、海外の購入サイトなどで入手できるような扱いになっています。
まずは温度を上げて、フィラメントを取り出し、冷却ファンユニットを取るところまでは先程のEnder-3と同じです。
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保護ラバーを取ります。
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見た目はEnder-3とほぼ変わりませんが、ヒーターブロックが真鍮製になっていて熱伝導性が向上し、内部のノズルとチューブのギャップにフィラメントが詰まりにくい構造になっています。
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ということで、Ender-3 Proではあまりギャップのフィラメント残留を気にすることなく、そのままノズル交換できる、とされています。
そこでチューブをいじらないままノズルを取り外してみます。
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確かにフィラメントの残りカスはほとんどないようです。
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ということでEnder-3 Proでは、ノズルの清掃はあまり気にすることなく、ノズルを交換するだけで十分かと思います。
ノズルを換えたら、再度、保護ラバーを付けて、冷却ファンユニットを付け直すだけで作業完了です。
ちなみに、Ender-3 Proのフィラメントヒーターブロックの構造が気になったので分解して中身を確認してみます。
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見るとヒーターブロックに特徴的な形状のステンレスのパイプが組み込まれています。
チューブはギャップを生まない位置に調整されてセットされているようで、緩まないように強く挿入されていて、引っ張り出すのに一苦労します。
チューブを引っ張り出すと、チューブの再度にフィラメントの残りカスのようなものが付着しています。
少しベタついているので、フィラメントの溶け残ったカスなのか、伝熱性を高めるグリース材なのか悩ましいですが、もしかしたら分解しないようが良かったのかも...と後で少し思い返しました。
また、チューブがヒーターブロックを貫通できるかと思って押し込んでみると、内部にあらかじめ仕込まれていたと思しき別のチューブが反対側から出てきました。
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もしかしたらこれは大切な具材なのかもしれませんので、取り出すことのないようにそのまま元の位置に戻しておきます。
なお、再組み立て後の印刷パフォーマンスは変わらないようなので、ノズルとチューブのセットアップさえ上手くいっていれば問題はないでしょう。
心配なら、ノズルの交換だけ行って、他のパーツは極力触らないようにしましょう。
ノズルの取り付けが失敗していた場合
個人には結構な頻度で吐出の押出径を変えるため、ノズルの取り付け作業はお手の物...という油断があったせいか、おそらくノズルの締め忘れが原因で、一晩印刷を放置していたらエライことになっていました。
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フィラメントの吐出口を覆うようにプラスティックの塊が出口を覆い尽くしています。
溢れ出たプラの硬い塊を取ると押し出されたラバーカバーと一緒にまさかのノズルまでもこの位置に付いています...。
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なんとかPLAの塊に沈んだノズルを救出できないものかとゴリゴリ削ってみましたが、さすが充填率100%のPLAの塊のタフさに簡単には取れそうもなく、断念しました。
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ここでの教訓としては、
ノズルの交換を行った直後は、うっかり締め忘れていた...ということの内容に十分注意しましょう。
まとめ
今回は、Ender-3の初代モデルの2つのノズル部分の清掃・交換の手順を中心にまとめていきました。
最近のEnder-3シリーズのお使いの方には既に古びた知識になっているのかも知れませんが、自作の3Dプリンターをフルスクラッチビルドする方にとってはまだまだ必要な知識になると思います。